「首相不起訴納得できない」幕引きに懸念の声
素朴な国民感情として考えがたい――鳩山首相の資金管理団体の偽装献金事件で、「不起訴相当」の議決を公表した検察審査会は同時に、虚偽記入や母親からの莫大(ばくだい)な資金提供を「全く知らなかった」とする鳩山首相の姿勢に疑問を投げかけた。
事件で名義を利用された人たちは「納得できない」としており、識者は「首相が果たすべき説明責任とは別問題だ」と、事件の“幕引き”を懸念する声が上がっている。
献金者として自分の名前を無断で使われたという都内の60歳代の主婦は、「検察審査会の判断にはがっかり」と憤る。鳩山首相の事務所に説明を求めて電話をしたこともあるが、きちんとした対応や謝罪もなかったといい、「鳩山首相には責任を取って議員も首相も辞めてほしい」と話す。
やはり名義を使われた都内の別の女性も、「被害者からすれば納得はいかない」と不満そうで、「今回の議決で、さらに開き直って説明をせずに逃げるようなら、鳩山首相はさらに国民の信頼を失う」と指摘。ただ、検察審査会が「上申書の内容そのものに疑問を投げかける声」などについて言及したことには、「少しでも常識のある人なら、やはりこのように思うのは当然だ」とやや留飲が下がった様子だった。
一方、民主党内には安堵(あんど)の空気が広がった。同党の大西孝典衆院議員は「検察審査会は厳しい判断をするケースが多いので少し心配していたが、妥当な結果だと思う」とほっとした様子で、「ただ、一般国民からすれば理解できない部分があるのはもっともなこと。鳩山首相は今後も必要に応じて説明をしていくと思う」と話す。
しかし、鳩山首相は、3月3日の参院予算委員会では、勝場啓二・元公設第1秘書の裁判後に関係資料を開示すると述べながら、最近は消極的な姿勢を見せている。首相の政治資金問題を国会で追及してきた自民党の柴山昌彦衆院議員は「秘書が政治家の罪をかぶったというのがこの事件の実態であり、これで逃げ切れるとしたら、トカゲのしっぽ切りと同じ」と指摘し、「提供資金の使途や脱税問題について、今後も国会で徹底的に説明を求めていく」と語気を強めた。
◆検察審査会=検察が下した不起訴の判断が妥当かどうか審査する機関。全国に165あり、審査員の任期は6か月。会議は非公開で、法律上の問題点については「審査補助員」と呼ばれる弁護士の助言を求めることが出来る。審査の結果、「起訴相当」「不起訴不当」を議決すると、検察は再度捜査し、処分を検討し直すことが求められる。
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