女王復活!尚子3年ぶりV
勝った、やっぱり尚子は強かった。2年ぶりにマラソンに臨んだ2000年シドニー五輪金メダリストの高橋尚子2時間24分39秒で、復活優勝を飾った。右足の肉離れを抱えながら、35・7キロでスパートをかけ、2年前の同大会で敗れた因縁の相手エルフィネッシュ・アレム=エチオピア=を一気にぶっちぎる圧勝。日本中が待ち望んだ復活劇で、2大会ぶりの出場を目指す2008年北京五輪に向けた第一歩を最高の形で踏み出した。
ゴール前に、右手を突き挙げていた。ラストの直線手前、抑えた思いが爆発した。勝った。大きく両手を挙げてテープを切る。2年ぶりのマラソン、3年ぶりの勝利。強い尚子が帰ってきた。
「帰って来ることができました!止まった時間がこれから進みそうです」。2年前と変わらない人気を示す2万人の競技場の観客、鈴なりの沿道の観衆…、みんなこの時を待っていた。
完ぺきな展開だった。スローペースで我慢のレース運び。先頭グループをふるい落としながら、その場所が来るのを待った。35・7キロの水道橋付近。一気にスパートをかけた。36キロから始まる“悪夢の坂道”の直前。2年前の同大会で失速し、敗れ、アテネ五輪代表落選につながった、暗闇に続く上り坂だ。坂の後で勝負する手もあったが「あの坂に挑みたい、負けたくない。自分自身の思い出との闘い」に、あえてこだわった。ゼッケンも2年前と同じ「31」。スピードを上げれば、誰も追えない。2年前に敗れた因縁のアレムは、あっという間にはるか後方に。敵は自分だけだった。
出場も危うかった。11日に右ふくらはぎなど3か所の肉離れを発症し、ドクターストップ。検査の結果、患部付近は脂肪ゼロだった。チームの西村孔トレーナーによると人間の体は運動すると、肝臓、血液、脂肪の順で内臓エネルギーを燃やし、最終手段が筋肉の燃焼。一時は引退を考えたどん底から、5月に10年間師事した小出義雄代表のもとを離れ、独立。5年分の練習日誌をめくり、手探りでメニューを組み立てる練習で、体は燃やすエネルギーもなくなるほど追い込まれていた。
同トレーナーは、これが負傷の原因と推測する。筋肉を削る寸前まで耐えた日々を無駄にしたくない。「出ないとか、途中でやめるとかはまったく考えなかった」テーピングを施し、痛み止めを飲んで出場し、勝った。走る喜びがエネルギーになっていた。
レース後の足の状態は、ほぼ大丈夫という。今後は未定。だが「3年後の大きな試合は頭に入れていきたい」と話した。集大成の08年北京五輪。ブランクを経て2大会ぶりに五輪走者となるマラソン界前人未到の領域への挑戦だ。「楽しい42・195キロでした!」シドニー五輪とまったく同じ勝利の言葉。尚子は、マラソンの楽しさを思い出し、もう一度走り始めた。
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